日本リハビリテーション連携科学学会について

設立の主旨

平成11年4月

20世紀も間もなく終わりを告げ、やがて新しい世紀を迎えようとしています。 近年の急激な科学技術の発展により、我が国における現代の社会は、国際化、都市化、核家族化、少子・高齢化、さらには価値観の多様化など、大幅な社会的変動の渦中にあります。こうした現代の高度化、複雑化した社会においては、特に障害者の社会参加や社会的自立は、ますます困難な状況になっているといえます。このような状況の中、障害を改善・克服して、自己の諸能力を最大限に発揮し、自立できるように支援するためには、障害者のリハビリテーションに関わる高度で包括的な活動が求められています。こうした要請を実現するための社会的課題としては、リハビリテーション全体に関わり、かつ専門分野間の連携を図る理論的研究、こうした理論に裏付けられた専門的技術・方法の実践、および、障害者のライフサイクルの視点に立った、最適な地域ケア実現のための総合的方策の検討などが喫緊の課題となっています。

ところで、1993年から2002年はアジア太平洋障害者の十年であり、また、1999年は国連の提唱する国際高齢者年でもあります。こうしたグローバルな視点からも、障害者及び高齢者の問題は、今日積極的に取り組まなければならない重要課題となっています。このような時代背景に鑑み、特に障害者や高齢者を中心としたリハビリテーションのニーズは、今後、増加の一途をたどり、それに伴って、リハビリテーションに関連する科学や研究成果への期待は、かつてないほどの高まりを見せることになることでしょう。戦後の我が国は、欧米先進国をモデルとして、障害者、高齢者等のリハビリテーションを展開してきました。行政主導による種々のリハビリテーション施策も、それなりに発展してきました。また、各種のリハビリテーション関連学会も量的・質的に拡大発展し、それぞれの専門的立場からの科学性が追求され、専門領域におけるレベルアップが図られてきたことは、非常に喜ばしいことであります。しかし、制度上の壁もあって、ともすれば、関連諸科学の協調には円滑性を欠き、真に生活者としての個々人のニーズに立脚した包括的な研究やその成果の活用に難点があったことは否定できません。来るべき21世紀にあっては、リハビリテーションの新しい理念と技術・方法が求められ、基本的なパラダイムにも転換を迫られています。こうした時代を迎えるに当たって、私どもは、専門領域別のリハビリテーションの研究と実践を重視しつつも、その枠組みを越えた新しい研究交流の場を用意すべく、ここに、「日本リハビリテーション連携科学学会」を創設いたしました。

本学会がめざすものは、リハビリテーション諸科学の有機的連携、現場の実践に即した研究・討議、リハビリテーション分野のネットワーク、トータルリハビリテーションなどであり、医学、教育学、心理学、社会福祉学、工学など関連諸科学の研究者、及び、医療、教育、福祉、職業などの分野における実践家の共通の広場として機能する学会であります。私どもは、皆様方のお力添えのもとに、この学会が一歩一歩の着実な歩みを続けていくべく、努力してまいりたいと存じます。

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